2016年5月7日土曜日

お兄ちゃん、銅メダルに輝く!

息子の柔術のジュニア国体で初めて訪れた町、スパンブリーはバンコクドンムアン空港から
車で約1時間15分ぐらいのただただ平野な田舎町だった。
参考までに記述すると、タクシーのチャーター料金は言い値が1500バーツであったが、
「知り合いが1200ぐらいだって言っていましたのでそれでいかが?」
といったらあっさり1200バーツになった。

スパンブリーに到着したのち、大急ぎでサムローと呼ばれるオートバイの後ろに
荷台をくっつけた乗り物で試合会場の大学まで向かったのだった。
このサムローに試合機関の2日間乗ることになったのだが、乗っている間風の巻き込みがひどく、
全く目を開けていられないなかなかつらい乗り物であった。

数日ぶりに会う息子は、遠路はるばる応援に来た母になど目もくれず、
たまたまコーチが面倒を見ているチェンライのチームの子たちと親交を深めるのに
大変忙しそうであった。のちに、全くモテない息子にこのチームの紅一点の女の子が
好意を寄せるといった珍しい出来事もあったらしいので、さぞかし楽しかったに違いない。

さて、肝心の試合はというとこの日に息子の試合はなく、息子の親友の試合があり、
もともと才能の塊の彼は決勝でこそ敗れたものの、あっさりと銀メダルを獲得した。
これで次の日に試合を行う息子のプレッシャーはなかなかのものになったはず。

試合当日、初戦は不戦勝、2回戦、3回戦を順調に勝ち進みベスト4まで何とかこぎつけた。
しかし準決勝で惜しくも敗退。しかし通常であれば、準決勝まで勝ち進めば負けても3位で
メダルは確定のはず。ところがこの大会に限っては、敗者復活戦でこののち2回戦以上を
勝ち抜いた選手(ベスト4以外)たちがもう一度戦い、準決勝で負けた選手とこれを勝ち抜いた
選手はもう一度戦い、3位を決定するという不思議なルールだということが判明。

このメダルを取れるか取れないかというのは、単純に負けるか勝つかよりも心臓に悪い。
3位決定戦の間中「ちょっともう見てられないから、トイレ行ってこようかな」
となんど息子の親友につぶやいて、「ちゃんと見てあげて」と諭されたかわからないほどだ。
この試合時間3分とはなんと長いことか・・・ そんな母の心配をはねのけ、
かなり気合の入った内容で彼は見事3位、銅メダルをもぎとったのだった。

赤ん坊の時は普通の子供より歩けるようになったのも遅く、初めて歩いたのも1歳4か月ぐらいだった。
自転車に乗れたのも小学2年セぐらい。誰よりも遅かった。
運動会で走っても、やっぱり遅く、「ああ、この子は運動神経があまりよくないのだな」と確信した。

そんな息子が、まぐれでもジュニア国体で銅メダルを取るとは夢にも思わなかった。
本当に心の底からうれしくて、普段喧嘩ばかりしてドラマのように「うるせーばばあ」
といわれることもしばしばだが、こんな親孝行をしてくれるとは夢にも思わなかった。
競技人口が少ないとか、いろいろなラッキーなことも重なったからだとも思うが、
運も実力のうちというではないか。誰が何と言おうと、これも彼の実力なのである。
ああ、なんという親ばかぶり。

今息子の高校の前を通ると、ジュニア国体でメダルを取った選手を称えるとても大きな看板が飾られている。
3人の生徒がメダルを胸に映っているのだが、その一番左端は息子だ。
県のスポーツ協会が、メダリストたちの写真をとって看板を作り、各学校に寄贈したらしい。

私にとって子育てとは何かにつけてお金もかかるしストレスや心労も絶えないものであるが、
時として思いもかけない喜びももたらしてくれるものである。